2022年4月27日、IR事業における区域整備計画の提出期限を迎えました。
現時点でIR事業の誘致をおこなっている立候補地は「大阪」と「長崎」の2ヶ所のみとなっており、去年から大阪IR、長崎IRのいずれもIRの事業者を募集し、共に区域整備計画の作成をおこなってきました。
そして国土交通省の観光庁は、大阪府と大阪市、そして長崎県から4月27日付でIRの区域整備計画を受理したとの発表をおこないました。
大阪IR、長崎IR共に無事に区域整備計画の提出を完了させましたので、ここからは国の審査委員会によるIR整備地の認定審査が開始されることになります。
審査委員会は、それぞれの候補地が提出した区域整備計画に基づき、経済効果や運営能力などを審査し、2022年の秋ごろを目途に認定審査がおこなわれるものと見られています。
IR整備地においては、最大で3ヶ所の認定をおこなう予定となっていましたが、最後までIR誘致を目指していた和歌山IRが県議会にて区域整備計画案が否決されてしまいましたので、最終的に残った大阪IRと長崎IRの2ヶ所で審査がおこなわれることになりました。
それぞれの候補地において、IR誘致に向けた取組みについてまとめていきます。
「結びの水都」がコンセプトの大阪IR、土壌問題などの課題も
去年にいろいろなIR候補地が脱落していく中、全ての候補地の中で一番最初に区域整備計画案を可決させたのが大阪府と大阪市が推進する大阪IRでした。
大阪IRの舞台を人口島「夢洲」に構え、「結びの水都」をコンセプトにした大阪IRを作り上げてきました。
大阪IRは日本第2位の規模を活かし、「世界最高水準の成長型IR」を掲げ、2029年の秋から冬にかけての開業を目指しています。
具体的には、富裕層、ファミリー利用、ビジネス利用などといった、ありとあらゆるニーズに対応したホテルを3棟建設し、総客室数2,500を構える計画です。
IRで一つの大きな要素となっているMICE施設においては、20,000平方メートルの展示場や6,000人以上収納可能な国際会議場を建設、さらにおよそ3,500席の劇場である「夢洲シアター」などの建設が計画されています。
そして大阪IRの売上のほとんどを占めると言われているカジノ施設では、カジノ施設の入場料や事業者からの納付金により大阪府と大阪市の年間収入でおよそ1,060億円が見込まれています。
これらの収入は、子育てや教育、医療などといった福祉の充実へ活用される計画とのことです。
カジノについてはギャンブル依存症対策への懸念が強く、未だに市民団体が大阪IRに反対する運動をおこなっています。
IRによってギャンブル依存症の患者が増えるとの見方が示されていることもあって、大阪府や大阪市はIR事業者と協力して取り組む方針です。
また、大阪IRの舞台である夢洲では、元々建設残土によって埋め立てられたため、土壌問題が大きな課題となっています。
2021年12月に土地の所有者である大阪市が改良費用を負担すると発表していましたが、改良費用約790億円が税金によって賄われることについて市民が反発しており、大阪市に対して住民監査請求をおこなう事態に発展。
今後、さらなる反対運動へ発展しかねない状況になっており、区域整備計画を提出した後もIR推進派と反対派による熾烈な闘いが繰り広げられそうです。
九州一体となって取り組む長崎IR、資金調達の課題も
長崎IRは九州を代表する観光地「ハウステンボス」を拠点とし、2027年の秋頃の開業を目指しています。
長崎IRのコンセプトは「様々な文化を受け入れ、融合し、新しい価値を生み出す街」としており、ハウステンボスのある佐世保市全体が長崎IRの舞台になっています。
佐世保市はこれまでも米軍基地や巨大観光地などといった、今までになかった新しい文化との共存を実現してきた近代都市であり、今回のIR誘致もこれまで培ってきた経験を活かした新たな挑戦です。
IRの施設においては、和の文化と洋の文化を融合し、ラグジュリーホテルや歴史ある老舗のヨーロッパホテル、近代的な現代ヨーロッパをイメージしたカジュアルホテルを構えつつ、伝統的な和の雰囲気漂う温泉旅館も建設される計画とのこと。
収益のメインとなるカジノ施設においては、格式高い意匠で顧客層に応じたプランや特典を提供する計画となっており、面積は政令で定める3%に近い2.82%を誇り、最大限の収益を目指す方針です。
カジノ収益ではおよそ年間391億円が見込まれており、大阪IRの半分以下であるものの規模を考えると決して小さな額ではありません。
大阪IRでは土壌問題が大きな課題になっていますが、長崎IRでは資金調達が大きな懸念材料となっています。
現状、長崎IRでは初期投資を出資する企業が明らかになっておらず、国内、国外共に公表されていません。
長崎IRは2027年の開業を目指していることから、2023年頃から土地の引き渡しや工事着工が予定されており、年内には認定される見通しを立てています。
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