大阪IRの夢洲鑑定額一致問題、そもそも一致の審議はおこなわれておらず

2023年1月30日、賃料を決定するために不動産鑑定士に依頼していた鑑定額が4社中3社で全く同じ金額になったことについて、大阪市は鑑定額が一致したことに対する審議について「説明はおこなったものの、鑑定額が一致したことについて話し合いはおこなわれていない」とのコメントを発表しました。

不動産鑑定士がおこなった夢洲の鑑定額が一致していることに対して、専門家から不自然な一致であるなどの声が高まっていましたが、大阪市が鑑定額の一致については審議していなかったことから波紋を呼んでいます。

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鑑定額が一致しても審議されなかったのは大阪市の認識

大阪IRの舞台である夢洲の賃料における鑑定額について、これまで「鑑定結果が適正かどうかは、第三者機関の審議会で金額は妥当と判断されたため問題ない」と説明していました。

しかし、実際に夢洲の鑑定をおこなった不動産鑑定士の話によれば、「IRを考慮しないという条件下における鑑定額に問題がないかどうか」の審議はおこなったものの、複数の鑑定士による鑑定額が一致していたことや、そもそもIRを考慮しないという条件について審議の対象にはなっていなかったことが明らかになりました。

つまり、審議会がおこなわれた時点では、IRを考慮しないことや鑑定額が複数の鑑定士で一致していることについては、審議会では全く触れられていなかったということになります。

まるで大阪市と不動産鑑定士のあいだでこれらの問題については片付いていると思われていたため、疑問の声をあげていた委員も深く議論することはなかったとのことです。

不動産鑑定士が違っても鑑定額は一致するものなのか

長年不動産鑑定をおこなってきたベテラン不動産鑑定士の田原氏によれば、「同じ条件下でも複数の鑑定士が見積もった鑑定額が完全に一致するということはありえない」とのことです。

つまり、参考にする情報が同じであっても、鑑定士によって見積もる額は異なるということです。

まだIRが日本に存在していない中で全国規模で事例を探したということは、それはつまり評価に使える取引事例はどれもIRを考慮していないと捉えることもできます。

実際、他の不動産鑑定士に対して大阪市はIRを考慮しない形での鑑定を依頼していました。

このように、不透明な情報の開示に対しては専門家からも疑問の声が聞かれ、当時鑑定をおこなった鑑定士からも鑑定業者に対して説明責任を果たすべきとの声があがっています。

鑑定額が低い方が良いとされている理由は

今回の鑑定額問題で特に指摘されているのは、「鑑定された金額が不当に安い」というものでした。

鑑定額は賃料を決めるための基準になるため、鑑定額が高い方が賃料を高く設定できることになります。

賃料が高ければ、それだけ売上があがることになるのですが、まるで賃料が低くなることを大阪市が望んでいるかのように思えます。

しかし、今回の賃料については、カジノ事業者であるMGMリゾーツやオリックスを中核とした「大阪IR株式会社」との賃貸契約で使われるものであり、事業者に対して優遇措置をおこなっているとの疑念が出ているのです。

IRには様々な業種の業者が入ることになりますが、今回の賃料が適用されるかどうかは今後の課題になると言えます。

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