2023年5月30日、住民訴訟での裁判において大阪地方裁判所で口頭弁論がおこなわれ、「IRの収益を考慮しておらず、不当に安い」と意見陳述を述べました。
この裁判は、大阪IRの舞台である夢洲の賃料について、鑑定額が不当であると住民が大阪市に対して訴訟を起こしたものです。
夢洲の賃料については複数の不動産業者が独自に鑑定したはずですが、全ての業者の鑑定額が同じだったことから、大阪市が指示したのではないかと疑念を抱かれていました。
夢洲の鑑定額を巡って始まった住民訴訟
大阪IRの舞台となる夢洲において、大阪市は賃料を決めるために複数の不動産業者に鑑定を依頼していました。
鑑定額が高いと賃料が上がってしまい、企業がなかなか借りてくれない状況に陥ってしまうのですが、出てきた額は月額428円という破格の鑑定でした。
単に破格というだけであれば疑念は持たれなかったのかもしれませんが、複数の業者全てが同じ鑑定額を出してきたことから、住民から「鑑定額が全ての業者で一致するのはおかしい」という声が上がっていたのです。
このような事態を受けて、市民グループが鑑定結果に違法性があるとして、賃貸借契約の差し止めを求め、1月16日に住民監査請求をおこないました。
しかし、住民監査請求に対して大阪市は「合議不調」と発表して請求を退けたのです。
この対応に対し、市民グループは「疑惑が払拭されていない」と判断し、それから3ヶ月後の4月3日に住民訴訟に踏み切りました。
訴えを起こした市民グループは、大阪市に住む60代から80代の男女10名です。
大阪市の主張は「審議会で承認された適正価格」だが…
市民グループは複数の不動産業者が同じ鑑定額を出してきたことについて疑念を持っていますが、特に重要視しているのは「大阪IRを考慮外」としていたことです。
大阪IRがスタートすれば収益も発生し、土地の価値が上がって賃料が高くなるはずですが、「IRの収益を踏まえて賃料を算出する方法もあるのに抜けている」と指摘しています。
5月30日におこなわれた口頭弁論では、10名からなる原告団が「大阪市側の不動産鑑定がずさんだ。IRの収益を考慮しておらず不当に安い」と意見陳述していました。
訴えられた大阪市は、そのような訴えに対して鑑定額は第三者の不動産鑑定士らで構成されている「市不動産評価審議会」にて承認されているので適正な価格であると主張しており、真っ向から対立しています。
5月29日、大阪市長は記者団からの質問に対して「賃料は正当な手続きの中で決めたものであり、見直す考えはない」と回答しました。
「市不動産評価審議会」が審議したのはあくまで市が設定した条件下であり、そもそも設定された条件が適正だったかどうかの審議はおこなわれていません。
IRの賃料をIRの収益を考慮外とした条件に問題がなかったかどうかの審議がされていないことから、鑑定額に対しての疑念は払拭されていないのが現状です。
原告団による今回の口頭弁論に対しては、大阪市が7月に主張を明らかにするとしていますが、今後の裁判の行方に注目が集まっています。
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