2024年8月6日、カジノを含む統合型リゾート施設(IR)の整備を進める大阪府と大阪市は、市内でギャンブル依存症患者らへの支援をおこなっている「大阪依存症センター(仮称)」についての検討会議を開いてセンターが持っている役割の具体案を明らかにしました。
国がIR整備に伴って大阪府や大阪市に求めている依存症対策の拠点となって、医療機関や市町村などと連携して相談から治療、回復までを継続的に支援する中核施設を目指しています。
検討会議では、昨年2023年5月から医療関係者や学識経験者、支援団体代表などが委員となっており、センターの機能について検討しています。
この日の会議では、大阪府と大阪市が委員の意見を元にまとめた具体案を示し、それについて意見を交わしました。
大阪依存センター(仮称)が持っている役割の具体案を公表
大阪依存センター(仮称)の役割の具体案によれば、センターでは医師や心理士、ケースワーカーらがギャンブルやアルコール、薬物などといった依存症に関する相談に対応することとしています。
そして患者や家族らを医療機関や市町村の担当部署に繋げて治療をおこない、回復まで継続的に支援するとのことです。
治療を受けている患者の中には仕事を持っている人もいるため、利用しやすいようにするために夜間や土日にも相談体制を整備することとしています。
国は昨年2023年4月、大阪府と大阪市のIR整備計画を認定した際、ギャンブル依存症への実効性のある対策や定期的な検証を条件の一つとして盛り込みました。
大阪府と大阪市は会議の意見を踏まえて、IR事業者が目指す令和12年秋頃の開業までにセンターを設置するとしています。
ギャンブル依存症の啓発活動や、調査分析、専門人材の養成といった機能も持たせるとのことです。
せっかく依存症対策を実施しても、途中でたらい回しが起こり治療の導線が途切れることが合っては対策とは呼べません。
治療を最後までおこなえるように体制を整えることがセンターの役割とも言えます。
潜在的に多いとされているギャンブル依存症患者への対策が重要
厚生労働省が令和2年に実施した調査によれば、回答した18〜74歳8223人のうち、依存症の疑いがあるとされた人の割合は2.2%でした。
国勢調査の同年代人口で換算すると、2.2%の割合は19万6000人となり、厚労省が推計している同年10月時点での依存症当事者約3000人の65倍となります。
つまり、依存症当事者の数とは明らかに大きな隔たりがあることから、潜在的な依存症患者は多数のぼっていると見られています。
検討会議に委員として参加した精神科医の籠本孝雄氏は、「センターが患者をたらいまわしにすることなく支援に繋げ、相談しやすく頼りになることがわかれば利用は広がる。そのためにも大阪府と大阪市には機能をしっかりと充実させてほしい」と求めました。
ギャンブル依存症対策は国から出された大阪IR実現のための宿題となっているものの、そうでなくても手厚い依存症対策が求められていることは確かです。
2030年秋に迫る大阪IR開業に向けて、ギャンブル依存症対策が今後どのように充実していくのか、注目が集まっています。
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