2024年9月10日、首相官邸で開かれた関西・大阪万博の関係者会合にて、大阪府の吉村知事はIRのくいうち工事の先送りなどの対策を発表し、見解を述べました。
それに対し、会合にて万博の開催を監督している博覧会国際事務局(BIE)のディミトリ・ケルケンツェス氏は「一連の措置が示されたことを大変嬉しく思う」と評価しました。
これは大阪IRの工事進行と万博の開催が同じ舞台の夢洲でおこなわれることから、両者と大阪府の間で調整がおこなわれていたものです。
今後はさらなる連携の強化が必要であり、万博もIRも成功に導くために大阪府がどう動くのか注目が集まっています。
ケルケンツェス事務局長が抱く万博開催とIR工事の同時進行
大阪府と大阪市が推進しているカジノを中核として統合型リゾート、いわゆる大阪IRの建設工事は、騒音などの影響を減らすことで大阪・関西万博の期間中も継続できることとなり、混乱はようやく収束した形となりました。
一連の対応を巡っては、大阪府や大阪市と日本国際博覧会協会(万博協会)との連携不足を指摘する声が上がっています。
「大阪IRと共存しながら、万博を成功させたい」と、吉村知事は万博の関係者会合で述べました。
会合では、万博の開催を監督している博覧会国際事務局のディミトリ・ケルケンツェス事務局長のメッセージが代読され、ケルケンツェス氏は一連の措置について高く評価しました。
会合では吉村知事とケルケンツェス氏の関係は良好であるように見えますが、実は3ヶ月前、この2人は重苦しい雰囲気に包まれていました。
関係者によれば、ケルケンツェス氏は6月に来日した際、吉村知事に「万博の時期はIRの工事はやめてほしい」と詰め寄ったものの、吉村氏は「それは難しい。前から説明してきた」と突っぱねたという。
ケルケンツェス氏は取材に対し、大阪IRの工事が万博期間中におこなわれることを知ったのは6月のことで、「とてもショックだった」と述べています。
大阪府は去年2023年9月にIR事業者と正式な契約にあたる実施協定を結び、来春より施設本体の建設工事に着手するスケジュールを発表しました。
工事が万博と重なることにおいては、大阪府や大阪市、国、万博協会が入る連絡会議で説明してきたと言い、大阪市幹部は「なぜ今さら中断を求められなければならないのか。万博協会がBIEに伝えていなかったのではないか」と不満を漏らしています。
一方、万博協会幹部によれば、IR工事が万博会場から最も近い場所で始まり、くいを打つクレーンが立ち並ぶことは5月になって初めて大阪府や大阪市から報告があり、懸念の声が一気に強まったと言います。
問われる府市と万博協会の密な連携
政府関係者は「大阪府と大阪市は『我々にはどうにもできないから、納得してください』と言うだけ。関係者の理解を得る努力をしてこなかった」と批判しています。
地元経済界の幹部は「万博協会も積極的に調整していない。今回の問題は大阪府と大阪市、万博協会の怠慢の結果だ」と指摘しています。
ケルケンツェス氏は万博協会の十倉会長に手紙を送って懸念を伝え、十倉氏は7月下旬に岸田首相に調整を要請しました。
政府も間に入って大阪府や大阪市とIR事業者との協議が続けられ、8月末に来日したケルケンツェス氏に対策後に想定される工事音の録音を聞いてもらってようやく理解を得たと言います。
この日の関係者会合では、大阪府と大阪市、万博協会などが対策を進めている上で連携するための連絡調整会議を発足させることも打ち出されました。
吉村知事は終了後、記者団に対して「これから、より情報共有を綿密にしていく」と強調しました。
一方、ケルケンツェス氏はメッセージの中で、「会議が有効に機能しなければ、万博の成功を危うくするだけでなく、参加国や来場者からの強い反発に直面することとなる」と釘を刺しました。
本当に万博開催中にIR工事を進めて大丈夫なのか、密に連携を取れるのか、メッセージの中からは幾ばくの不安が見え隠れしている状況です。
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