2022年5月11日、大阪市民ら5人が大阪府や大阪市が推進しているIRについて、建設予定地である「夢洲」の土壌対策費用負担を巡って、事業者へ土地を貸す契約の差し止めを求めて大阪市へ住民監査請求をおこないました。
夢洲の土壌対策費用はおよそ800億円と言われていますが、あくまで概算であり今後も費用が膨らむ懸念があること、土壌対策費用を賄う意味が本当にあるのか採算性が不明瞭であることなどから、大阪市が土地改良のために税金である公費を使うことは違法だと主張しています。
住民監査請求に対しての対応は監査委員に委ねられることになりますが、もし請求が不本意な結果になった場合は、住民訴訟へ発展させる検討をおこなう方針です。
夢洲の土壌対策費用はおよそ800億円…今後膨らむ可能性を示唆
大阪IRの舞台となる夢洲は、大阪市にある人口島で、もともと建設残土によって埋め立てられた経緯もあって、現状液状化の危険性や、基準値を超える汚染物質の検出などといった課題があります。
夢洲はIRのみならず大阪万博の舞台にもなっているため、以前から問題視されていた人口島です。
そんな夢洲に対して、大阪市は今公費を投じて土壌対策をおこなおうと模索しています。
2021年12月、松井大阪市長は「事業者にIRが成り立つ土地を提供することが、土地所有者としての責務」として、およそ800億円かかる土地改良費を大阪市が負担すると発表したのです。
ここまでして大阪市が夢洲に対して改善に取り組んでいる理由には、大阪IRで事業者と結んだ基本協定書の存在が影響しています。
2022年2月に大阪府や大阪市がIR事業者と結んだ基本協定書によれば、もし夢洲の土地問題において、「事業に著しい悪影響を与える事象となった場合」や、「市が事業者と協力して適切な措置を講じない場合」には、事業者側から協定を解除できるとされています。
事業者が協定を解除することになれば、大阪IRは立ち行かなくなり、4月に提出した区域整備計画が認定されなくなってしまいます。
国からも夢洲の土壌問題は大きな懸念材料として挙げられていることからも、大阪IRを開業するためには土壌の改良は必須です。
しかし、夢洲の地盤沈下は現状も続いており、概算で算出された土壌対策費の800億円では留まらないとの指摘もあります。
そうなってしまっては、実質土壌対策費は青天井となってしまい、どれだけ公費を投入すれば問題が解決するのか見通しが経たなくなる恐れがあります。
市民らが声を挙げて実現した大阪市への住民監査請求
市民ら5人は、大阪府や大阪市が事業者との間に結んだ基本協定書について、「地盤条件の全てが市の責任になると解釈でき、費用が今後膨らんだとしても、市が無制限に負担しなければならない内容になっている」として土壌対策費が青天井になる懸念を指摘しました。
また、もし土壌対策をおこなったにも関わらず問題が解決しなかったり、新型コロナウイルス終息の見通しが立たなかったりした場合に事業者が撤退できる内容になっていることに対し、土壌対策の費用がどうなるかわからないのに、土地の賃料収入で賄えるとしている大阪市の計画は適正でないと主張しています。
大阪市にとってはリスクが非常に大きいはずなのに公費を投入しようとしている点について、過大な支出を制限する地方財政法や地方自治法などに違反すると指摘。
市民らは土地の定期借地権設定契約の締結差し止めを求めて、大阪市に対して住民監査請求を実現させました。
松井大阪市長は、住民監査請求を受けて、あくまで予定している負担額の範囲内で土地改良を進めると述べましたが、もし範囲内で問題が解決しなかった場合にどうするのかまでは触れませんでした。
市民らは、もうし住民監査請求が不本意な結果に終わった場合は、住民訴訟を検討するとしています。
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