IR区域整備計画案の提出に向けて動き出す3候補地、資金問題や課題への取組みは

2021年9月30日、IR事業を推し進める国土交通省観光庁は「特定複合観光施設(IR)区域整備計画の認定手続、認定審査に関する基本的事項」を発表し、認定審査のプロセスや審査項目、配点などが明らかになりました。

国内初となるIR開業に向けて本格的に動き始め、IR事業の候補地は運営事業者と共に国へのIR区域整備計画案の申請準備をおこなっています。

IR事業の候補地は最終的に大阪IR、長崎IR、和歌山IRの3つに絞られ、それぞれの候補地が本格的な動きを見せています。

今回は、それぞれの候補地について、抱えている問題や課題について解説します。

目次

大阪IR:IR事業の規模は最大の1兆円超えも計画の変更に不安が残る

大阪府と大阪市が推し進める大阪IRは、他の候補地と比べると事業者選定が遅れましたが、アメリカを本拠地に持つ大手リゾート会社「MGMリゾーツ・インターナショナル」の日本法人「日本MGMリゾーツ」と「オリックス株式会社」の共同事業体「MGM・オリックスグループ」を事業者に選定しました。

2022年4月に提出期限となるIR区域整備計画については、大阪府と大阪市、事業者で協力して2021年中に作成を開始する見通しです。

大阪IRの舞台となるのは「夢洲」で、2025年におこなわれる大阪万博に合わせて開業することで相乗効果を狙っていました。

しかし、新型コロナウイルス感染拡大の影響により、大阪IRの開業は2020年代の後半にずれ込み、全面開業ではなく部分開業になる見通しです。

初期投資額は1兆800億円と最も大きな規模になったものの、大阪万博に合わせた開業ができなくなったことから施設面積も縮小しており、大阪IRに対して懸念視する声があがっています。

長崎IR:ハウステンボスを活用したIR実現を目指す

長崎IRはハウステンボスを舞台にしており、「モダンジャパン」をコンセプトに掲げています。

ヨーロッパの「ストック&リノベーション」文化を活用し、ハウステンボスの既存の建物を活かした計画が特徴的です。

長崎IRを推し進めている佐世保市は古くから国際的な交流が活発で、観光産業と共に歩んできた歴史があるため、事業者である「カジノオーストリア」と連携した世界最高水準のIR施設の建設を目指しています。

長崎IRはギャンブル依存症対策にも力を入れており、2020年11月から官民一体の協議会を設立しました。

協議会には事業者である「カジノオーストリア」も参加し、規則や法令を遵守し、安心と安全を最優先にして経営をおこなっていることを強調しています。

地元住民が不安視している治安に関する質問についても、「カジノ区域外いおいても警察と連携を強化していく」と力強く答えました。

ハウステンボスを活かしたIRのため、規模は決して小さくなく、観光業を得意としている自治体ならではの取組みに注目が集まっています。

和歌山IR:資金調達の確実性や事業者の透明性が不安材料

「リゾート型IR」をコンセプトに掲げている和歌山IRは、舞台となっている「マリーナシティ」の環境を活かす計画です。

長期滞在を可能とし、和歌山の豊かな自然を楽しむアクティビティやeスポーツ体験を楽しめる施設が提案されています。

事業者については、6月に全国に先駆けて「クレアベストニームベンチャーズ」と「Clairvest Group Inc.」の共同事業体「クレアベストグループ」を事業者に選定しました。

他の候補地よりも一歩進んでいるイメージがありますが、県議会からの懸念が強くなっているのが現状です。

懸念の声が大きい原因は、初期投資額およそ4,700億円の調達方法や、基本協定締結当日に「くれアベストグループ」の代表取締役が交代するなど事業の継続性や安定性など多岐にわたります。

共同事業としては、IR開発やマネジメントをおこなう会社「AMSEリゾーツジャパン」やヨーロッパでゲーミング施設やリゾート運営をおこなっている「パルトゥーシュ」なども参加を表明しており、事業者に対する懸念を払拭していきたい狙いがあるようです。

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