ギャンブル依存症対策「長崎モデル」が長崎IR不認定で行き場を失う事態に

news_eyecatch

長崎県が練っていたカジノを含む統合型リゾート「長崎IR」の誘致に合わせて進めてきた、カジノ依存の問題を解決するためのギャンブル依存症対策の計画が行き場を失っています。

教育や医療など、様々な分野からのアプローチが特徴の「長崎モデル」を構築するべく動いていたものの、IRの事業計画が政府に認定されず、今後の見通しが立たなくなってしまいました。

支援団体の関係者からは、「例えカジノがなかったとしても、依存症対策はしっかりと取り組んでほしい」との声が上がっています。

目次

ギャンブル依存症対策として掲げていた「長崎モデル」

長崎IRを巡っては、当初から「カジノは依存症を助長する」という指摘が多くあがっており、自治体や運営事業者にはギャンブル依存症対策の徹底が求められていました。

そのため、長崎県では2021年度に九州・山口各県を巻き込んで「九州地方依存症対策ネットワーク協議会」を発足し、ギャンブル依存症の治療や支援に携わる人材を育成するための学習プログラムを開発しました。

長崎IRの誘致先でありハウステンボスを有する佐世保市には、2022年度から民間に委託して相談窓口を開設しています。

他にも、教育の振興や医療提供体制の整備、社会復帰支援など、様々な項目を事業計画に詰め込んで取り組んできました。

これらの取り組みを通称「長崎モデル」として掲げ、将来的にはカジノだけでなく様々なギャンブルに対して一体的に運用しようと考えていたのです。

長崎モデルを掲げてギャンブル依存症対策に取り組んできた長崎県ですが、資金調達の懸念などから計画は2023年12月に不認定となってしまいました。

長崎県IR室の湯川亮一室長は、「カジノを核にして大きな枠組みで対策ができないかと思い、オール九州の体制づくりを勧めていましたが、前提が崩れてしまいました」と無念さを滲ませています。

長崎モデルのギャンブル依存症対策に高まる期待と不安

長崎モデルの関係者の中には、長崎IRの賛否とは別に「病気に光が当たるので、ギャンブル依存症対策強化に繋がる」とギャンブル依存症対策について評価している人もいました。

なかなか進まないギャンブル依存症対策に対する期待が大きかった取り組みだったため、今後のギャンブル依存症対策について先行き不安が広がっています。

全国ギャンブル依存症家族の会・福岡の代表で長崎でも活動をしている村田磨美さんは「今さらゼロに戻すのは考えられない」と語気を強めており、長崎県内では特に当事者らと自助グループを繋げる仕組みが十分に整っていないとして「誘致段階の長崎県の姿勢はあれもこれもと無理をしているように見えたので、地に足をつけてやってほしい」と注文しています。

長崎県によれば、ネットワーク協議会と佐世保市の相談窓口は今年度も継続しているものの、来年度以降は相談窓口の継続は未定です。

事業者が担うはずだった対策は費用の問題もあって、行政が全てを引き受けて実施するのは難しいと言います。

今回の長崎IR誘致で得たギャンブル依存症対策の知見は、長崎県と佐世保市にとっては「IRレガシー」の一つです。

県障がい福祉課の町田裕央企画監は、「長崎が引っ張っていかないとという雰囲気は今でもある。既に走り出している対策も含めて検証を進め、可能な部分をフォローしたい」と話しています。

ギャンブル依存症はカジノIRの話が上がる前から重要視されているため、今後の動向に注目が集まっています。

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

コメント

コメントする

目次