大阪IR事業者が解除権行使の可能性、万博の裏でIR撤退の危機感あらわに

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2024年7月末、大阪IRの工事をめぐって、日本国際博覧会協会(万博協会)の十倉会長(経団連会長)らが、万博期間中は工事を中断するように大阪府と大阪市に求めていました。

それに対し、IR事業者であるMGMリゾーツ・インターナショナルの幹部は商売として成立しないのであれば解除権の行使も議論されると見解を述べています。

吉村府知事は大阪IRの工事が遅れることによってIR事業者の撤退に繋がりかねないと危惧していますが、大阪・関西万博と大阪IRの両立の難しさが浮き彫りとなりました。

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大阪・関西万博最大の売りはリングからの「景観」

2025年4月に開幕が予定されている大阪・関西万博の会場となる大阪湾の人工島・夢洲では、万博会場の隣で大阪IRの工事が進んでいます。

しかし、この工事をめぐって2024年7月末に経団連会長である十倉会長から、会談していた吉村府知事に対して大阪IRの工事中断要望がありました。

これに対して大阪市幹部は「万博教会側には開催期間中も大阪IRの工事を進めることで理解が得られていると思っていた。それが突然、トップ同士の話し合いで中断という話が出てきて驚くばかり」と憤りを隠せない様子です。

この工事中断要請は十倉会長だけでなく、博覧会国際事務局(BIE)からも同じように出ていました。

工事中断要請に対して、吉村府知事は「万博の開催期間中、大阪IRの工事が続くのはマスコミをはじめ皆さんご存知のはず。国からも認定を得ている」と戸惑いを隠せません。

海外パビリオンの撤退などでイメージダウンが続く万博ですが、中でも最大の目玉としている世界最大級の木造建築物とされる大きな屋根「リング」は万博の売りである景観に欠かせない存在です。

「高さ20メートルもある屋根の上から見渡せる景色は、日本一SNS映えする場所だとPRし、集客に繋げたい考えです」と万博協会の幹部が語るほどの万博成功の武器となっています。

しかし、大阪IRの予定地では現在液状化対策の工事が進んでおり、高さ10メートルほどの重機が稼働している様子が万博会場の場所からも見えている状況です。

万博が開幕する時期には地盤対策工事も完了して杭打ちなどを着工する予定で、大阪IR本体の建設工事に入るタイミングと重なります。

万博協会は「リングから工事のクレーンやダンブが丸見えなら台無しだ」と景観が損なわれることを危惧していますが、その一方で元々は大阪IRが先に開業して直後に万博が来ることで集客が可能になると話し合われてきた背景があります。

万博の後ろになってしまった時点で大阪IRは大きな遅れが出てしまっているのに、万博のせいで工事が半年もストップになるのはIR事業者も黙っているわけにはいきません。

商売として成立しないなら「解除権」行使を検討せざるを得ないIR事業者

今回の十倉会長や博覧会国際事務局(BIE)から出された万博開催中の大阪IR工事中断について、アメリカのMGMリゾーツ・インターナショナルと日本のオリックスが出資する事業者「大阪IR株式会社」(大阪IR)の関係者は、「万博開催期間の半年間、IR工事を中断するのは無理だと突っぱねている。半年も中断すれば、事業費がかなりのコスト増となるのは明らか。それでなくとも工事のスケジュールは遅れている。地盤の状況も最初に知らされていた以上に悪い。とてもじゃないが、応じることはできない」と不満を露わにしました。

IR工事の規模については、万博会場の工事をしているゼネコンスタッフに聞いたところ、「大阪IRの本体工事の内容をネットで確認した限りだと、杭打ちのためには高さが30メートル近くに鳴るクレーンや重機が数多く投入されるとみられます。万博は半年限定の仮設の建設ですが、大阪IRは恒久的なものですから、その規模は万博を遥かに凌ぐものです」とのことです。

大阪・関西万博と大阪IRの溝はなかなか埋まらない状況が続いていますが、大阪IRの工事が進まなくなるとなればIR事業者の「解除権」が注目されることになります。

解除権とは、2026年9月末までに資金調達や土地整備などが整わなかった場合、大阪IRは違約金なしで事業が撤退できる権利のことです。

2023年4月に国が事業を認定した後、9月に大阪府市と大阪IRとの間で結ばれた「実施協定」の中に解除権が盛り込まれました。

MGMリゾーツ・インターナショナルの幹部は「当初大阪府市が言っていた通り、万博より先にIR開業であれば何ら問題はなく、我々も稼げたはず。しかし日本側の都合でずれ込むばかり。新型コロナなどの影響でIRを取り巻く情勢はめまぐるしく変化している。万博で工事中断となればさらに遅れることは確実で、そうなると事業計画通りにIRを運営していけるのか、という話になる。大阪府市に補償を求めることもあるだろう。商売として成立しないなら当然、解除権の行使も議論されることになる。傷が浅いうちのほうが良いですから」と解除権の行使について言及しました。

吉村府知事もこの状況に危機感をあらわにし、8月5日の記者会見では解除権の行使について触れました。

大阪・関西万博開幕まで残り8ヶ月と迫る中、大阪IRと折り合いをつけて前へ進めるのか注目が集まっています。

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