大阪IR事業者が「解除権」を放棄、日本初のカジノ開業はほぼ確実に

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2024年9月7日、大阪市の人口島である夢洲で整備が続いているカジノを中核をする統合型リゾート大阪IRを巡って、IR事業者が違約金なしで撤退可能となる「解除権」を放棄する方針を固めたことが明らかとなりました。

2030年秋の開業に向けて建設工事を本格化させる前に、事業を継続させる姿勢を明確にする狙いがあり、これで国内初のIR整備が決定的となります。

関西・大阪万博開催している間の工事問題を牽制する狙いがあると見られ、今後の動向が注目されています。

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IR事業者が持っていた切り札「解除権」

政府は2023年4月、日本国内で初めて大阪府と大阪市から提出されたIR整備計画を認定しました。

整備計画によれば、約49万平方メートルにカジノや3つのホテル、国際会議場などを整備することになっています。

大阪IRの事業者である「大阪IR株式会社」は、アメリカMGMリゾーツ・インターナショナルの日本法人とオリックスが中核となって出資しており、2023年9月に実施協定を締結させました。

「解除権」は大阪IRが大阪府と結んだ実施協定に盛り込まれており、複数の前提条件が整っていなかった場合には、2026年9月末までは違約金なしで計画を撤回できるようになっています。

前提条件とは、初期投資額が想定の1兆2,700億円から膨らまないこと、観光需要がコロナ禍前の水準に回復すること、大阪市が適切な土壌対策を実施すること…などといった健全な事業を進めるにあたって必要な条件となっています。

これらの前提条件をクリアするために、IR用地を所有している大阪市と事業者の間で結んだ土地賃貸契約では、液状化対策などの費用を大阪市が788億円を上限に負担することが明記されました。

大阪市は2023年12月から液晶化対策や土壌汚染対策、地中の障害物除去工事を進めており、関係者によれば9月中にも用地を事業者側に引き渡す方向で協議を進めています。

大阪府や大阪市によれば、IRの初期投資額は資材の高騰などを受け、当初から1,900億円増の約1兆2,700億円に上っています。

開業後は年間2,000万人の来場者と約5,200億円(うちカジノ部分の約4,200億円を含む)の売上を見込んでいます。

大阪府と大阪市は、IR事業者からの納付金とカジノ入場料により年間で約1,060億円が入ると想定しています。

解除権放棄でより強く求められる大阪IRと大阪万博の両立

夢洲は2025年に開催予定である大阪・関西万博の会場であり、IR工事と万博の開催が同時に進むことになります。

大阪IRの実施協定によれば、万博期間中の工事を前提にして、騒音や振動防止のために適切な対策を講じることや、万博会場への影響が大きい工事については工程や施工方法を大阪府や大阪市などと調整することになっています。

この点については、博覧会国際事務局(BIE)のディミトリ・ケルケンツェス事務局長は今年6月、奈良市で開かれた国際会議の席で、大阪府の吉村府知事に対して、騒音や景観、安全などの面から万博に悪影響を及ぼさないように懸念を伝えました。

今回の「解除権」放棄については、これまで工事を担っている建設事業者から、事業資金を融資する金融機関などから撤退を不安視する声があがっていたため、その懸念を払拭する狙いがあります。

今後は万博とIRの兼ね合いを考慮する必要があるため、IR工事のスケジュールや工法などについて事業者側との調整を進めているとのことです。

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